出題頻度

ダグラス・ホールは、ボストン大学マネージメント・スクール組織行動の教授。
キャリアは、他者との関係性のなかで互いに学び合うことで形成されていく「関係性アプローチ」を重要視し、変化の激しい現代では相互依存的な人間関係のなかで学び続けることによって「変幻自在なキャリア(プロティアン・キャリア)」を築けると提唱しています。
「4つのキャリアの定義」、「プロティアン・キャリア」を中心に、「関係性アプローチ」など出題されることが多い内容はしっかり押さえておきましょう!
もくじ
キャリアの定義

ホールは、スーパーのキャリア発達理論に強く影響を受けており、心理的成功こそキャリア発達の最終目標であると考え、次のようにキャリアを定義している。
ホールのキャリア定義
- キャリアとは、成功や失敗を意味するのではなく、早い遅いでもない。
- キャリアは歩んでいる本人によって評価されるものである。
- 主観的なキャリアと客観的なキャリア双方を考慮する必要がある。
- キャリアとはプロセスであり、仕事に関する経験の連続である。
プロティアン・キャリア

- プロティアン・キャリアとは、「変幻自在である」ことを意味する。
- プロティアン・キャリアとは、従来の組織によって形成されるものではなく、組織から与えられるものでもない。
個人の嗜好によって柔軟に方向転換されるキャリアであり、キャリアを営む本人が成功と思えるキャリアを自ら柔軟に構築していくことこそがプロティアン・キャリアである。
プロティアンキャリアに必要な2つのメタ・コンピテンシー
プロティアン・キャリアを形成していくにあたって必要な2つのメタ・コンピテンシーがあるとしている。
- アイデンティティ
エリクソンによって提唱された概念であるが、ホールはアイデンティティを2つの構成要素から成り立つとしている。第一に自分の価値観・興味・能力・計画に気付いている程度。第二に過去と現在と未来の自己概念が統合されている程度である。 - アダプタビリティ
アダプタビリティ=適応コンピテンス(①アイデンティティの探索・②反応学習・③統合力)×適応モチベーション としている。
関係性アプローチ
ホールは、キャリア意思決定に関する理論は「マッチングモデル」と「プロセスモデル」の2つに分けられるとし、次の4つ意思決定の理論のなかに「関係性アプローチ」を定義している。

キャリア意思決定
- 日々の選択
キャリア上の意思決定は、大きな選択を意味するのではなく、日常の選択を意味する。 - サブ・アイデンティティの選択
キャリア役割を獲得するだけでなく、それに付随する自己の側面も選択していくことを意味する。 - 適切なキャリア選択に必要なものー自尊心
心理的成功は自尊心を高めることになる。自尊心が高ければ事故への気づきが高まり、適切なキャリア選択ができる。 - 人間関係の影響
ホールの理論では、関係性を重視する関係性アプローチを重んじている。
相互依存的な人間関係において、互いに学び合うことでキャリアが発達していくとする考え方。
プロティアン・キャリアを促進させる10のステップ
- キャリアを有しているのは個人でもあるという認識からスタートする。
- 個人が発達の努力をするための情報やサポートを作り出す。
- キャリア発達は関係的なプロセスであることを認識する。組織やキャリア実務家は、ブローカーとしての役割を果たす。
- キャリア情報、アセスメント技術、キャリア・コーチング、キャリア・コンサルティングを統合する。
- キャリア・サービスや新しいキャリア契約に関して、従業員を十分なコミュニケーションをとる。
- キャリア・プランニングだけでなく、仕事のプランニングを促進させる。
- 人間関係や仕事を通じての学習を促進する。
- キャリアを発達させる仕事や人間関係への介入を促進する。
- 職務に熟達することではなく「学習者としてのアイデンティティ」を重視する。
- 「発達のために自分の周りにある資源」を使うという思考傾向を伸ばす。
まとめ|ココだけはおさえておこう
- キャリアの定義(4つ)
- 心理的成功
- プロティアン・キャリア
- 2つのメタ・コンピテンシー
- 関係性アプローチ