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認知療法は、1970年代にアーロン・ベックによって提唱され、以来、改良と実証が重ねられてきている短期の構造化された心理療法。
実証データに基づく有効な治療法として、現在でも心理療臨床の現場で、うつや不安障害をはじめ、不眠症・摂食障害や怒りのコントロールなどへ活用されている。
理論的背景(ベックの着目点・認知の歪み)、自動思考やスキーマ、「7つのコラム法」などを中心にしっかりとおさえておきましょう!
もくじ
理論的背景
- ベックは、うつの研究をするなかから、発症直前に着目し、クライエントの問題の核心は、直面する出来事そのものよりも、その認知にあるとした。
- 「人間の気分は、その人が状況をどう認識するかによって変化する」とおいう仮説が認知理論の出発点。
- エリスと同様に、人間の問題を外界と個人の受け止め方(認知)と、その結果という3つの要素で捉える。
ベックは、認知の歪みを類型化可能とした。
主要概念や技法
- 認知を表層にある「自動思考」と深層にある「スキーマ」という2つのレベルを仮定。
- 自動思考とは、ある状況において頭に浮かぶイメージや思考のこと。
スキーマとは、自己や世界の捉え方についての個人特有のパターンのこと。
スキーマは自動思考を生み出す基本的枠組みのようなもの。個人の人生観や世界観ともいえる。 - 抑うつ状態や不安状態では、自動思考が非論理的で不合理なものとなっている事が多く、これを「認知の歪み」とし、発見し検証していく事が認知療法の治療の中核となる。
認知の歪みの類型
1、憑依的推論 | 根拠に乏しいのに、他人の心を読みすぎたり、将来のことを先読みしすぎたりして、事実から飛躍した悲観的な結論を出してしまうこと |
2、分極的思考 | 中庸を認めず全か無かと考えること(all or none thinking) |
3、マイナス化思考 | 良い出来事やなんでもない出来事を悪い出来事と解釈してしまうこと |
4、感情的決めつけ | 自分の感情を根拠にして状況を判断すること。うつ状態では否定的な感情が支配しており、否定的結論ばかりを出してしまう |
5、レッテル貼り | 歪んだ認知に基づいて、ネガティブな自己イメージを作り上げてしまうこと。例)「私はダメ人間だ」 |
6、誇大視・微小視 | 短所や失敗を拡大解釈し、長所や成功を過小評価すること。ちょっとした失敗を取り返しのつかないもののように考えてしまう「破局視」 |
7、過度の一般化 | 一部分のことだけを取り上げて、全ての事柄にあてはめること |
8、自己関連付け | 良くない出来事を理由なく自分のせいに考えること |
9、選択的抽象化 | 良いことも悪いことも起きているのに、良いことは無視して悪いことばかりを取り上げて考えること(心のフィルター) |
10、「すべき」思考 | 必要以上に「〜しなくてはいけない」と考えて、自分自身を追い込んでしまうこと |
認知療法の治療のプロセス
- 心理教育(認知理論と認知・感情・行動・身体症状の相関についての認識)
- 認知(自動思考)の発見と記録
- 認知(自動思考)の妥当性と検証
- 歪んだ認知のより現実志向的な認知への置き換え
7つのコラム法
治療プロセスでは、「7つのコラム法」が多用される。
生活のなかで、ネガティブな出来事をあげ、そのときの気分と自動思考を記録し、自動思考に対する根拠と反証を検討しながら、歪んだ認知に着目し、それを修正するべく現実適応的な考えや、問題解決プランを立てていく。
❶ 状況 |
❷ 気分 |
❸ 自動思考(そのとき浮かんだ考え・イメージ) |
❹ 根拠(自動思考を裏付ける事実) |
❺ 反証(自動思考に反する事実) |
❻ 適応的思考(代わりとなる考え) |
❼ その後の気分(0−100%) |
まとめ|ココだけはおさえておこう
- 理論的背景:うつの研究をするなかから、発症直前に着目
- 自動思考
- スキーマ
- 認知の歪み
- 7つのコラム法